育児離職防止を「動機付け・衛生要因」から考える 

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厚生労働省によると、昨年11月時点の正社員有効求人倍率は1.05倍で、調査開始以来最高となりました。一方で、「良い人材を、正社員としてなかなか採用できない」という実感を持っている採用担当者の方も多いのではないでしょうか。

そのような中、ベンチャー企業の間で社員への育児支援施策を充実させる動きが広がっています。ベンチャー企業で働く女性や若手社員が増える中、出産・育児による離職を防ぎ、人材を確保しようという動きです。

例えば、カスタムウェディングサービスを手掛けるベンチャー企業のCRAZYでは、社内に託児スペースを設けるといった育児支援の充実をはかりました。加えて同社は育児休業から復帰した女性社員をマネジャーに昇進させたそうです。当該の女性は「やりがいを感じる。パパママだけでできないことを克服する制度を会社が柔軟に用意してくれ、安心して働ける」と、仕事への意欲をコメントしています(2017年12月26日付け日本経済新聞)。これは、「動機付け・衛生要因」がうまく働いた事例といえます。

■動機付け・衛生要因とは(視聴時間:44秒)

「動機付け・衛生要因」は、ハーズバーグが提唱したモチベーションに関する理論です。人が働く時、仕事に「満足」をもたらすものを「動機付け要因」と呼び、「不満」をもたらすものを「衛生要因」と呼びます。「動機付け要因」にあてはまるものは、チャレンジングな仕事へのアサインや昇進など、「衛生要因」にあてはまるものは、会社の方針や給与、労働時間などです。

動機付け要因と衛生要因はどちらか一方だけを満たしてもうまくいかず、双方がバランスよく満たされて初めて人のモチベーションは上がります。

今回の事例でいえば、「託児スペース導入」などの柔軟な育児支援施策は「衛生要因」にあてはまり、「育休明けの社員を管理職に昇進させる」のは「動機付け要因」にあてはまります。ポイントは、「育児支援策だけを用意し、仕事のやりがいを与えない」、あるいは「昇進はさせるが、それを遂行できるだけの育児支援策を用意しない」、ではなかった点です。動機付け・衛生要因の両者が適切に提供された結果、当該女性の「やりがいを感じる」というコメントにつながったのでしょう。

社会科学者の武石恵美子氏は著書の中で、女性が活躍するためには、女性の意欲を引き出して活躍につなげること(働きがい)、女性の離職防止のために家族的責任を支援するとともに女性の就業継続が可能な働き方への変革を進めること(働きやすさ)の2点を「車の両輪」として同時に進めることが重要だ、と述べています。実際、「女性の就業意欲向上策と両立支援策双方への取り組みが高い」企業の女性正社員の「仕事のやりがいスコア」の平均値が高くなっている、という調査結果もあります。

前述したベンチャー企業の取り組みは、モチベーション理論にのっとりながら、女性活躍推進の要諦を押さえたものになっているため、仕事へのやりがいを高める効果があったのではないでしょうか。

人手不足や採用難の問題は、一朝一夕には解消しない様子です。いかに、今いる人材の能力を引き出し、活躍してもらうのか。動機付け・衛生要因をはじめとしたモチベーション理論は、そのヒントになるかもしれません。

<参考文献>
『ワーク・ライフ・バランス支援の課題-人材多様化時代における企業の対応』東京大学出版会/佐藤博樹、武石恵美子編著/2014
『キャリア開発論-自律性と多様性に向き合う』中央経済社/武石恵美子著/2016

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