在庫評価益って計上しても良いの? 

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近年、決算書の資産評価などの会計数値にも時価が取り込まれています。例えば、期末時点での棚卸資産や有価証券の時価評価、また固定資産の減損会計もある意味時価を取り込んだ会計処理と言えます。取得原価に対して時価は下落する場合も上昇する場合もありますが、会計では一部を除いて時価が下落する場合についてのみ簿価の切り下げ(いわゆる評価減)が必要になります。

会計ルールで収益は実現主義で認識されます。したがって、時価の上昇については「未実現利益」(いわゆる含み益)として売却等されるまで認識しません。時価評価と言っても全て時価で評価するわけではないのです。

さて、先日、石油元売り大手の昭和シェル石油が2019年3月決算の1-6月の業績を発表しました。2018年1-6月の当期純利益は予想以上の原油価格の上昇による「在庫評価益」を主たる要因の1つとして対前年同期比2.9倍の460億円とのことです。会計ルールでは評価益は認識しないのが通常です。昭和シェル石油の在庫評価益はどういう仕組みなのでしょうか。

簡単な例を見てみましょう。期首に@100円の商品が100個あり、当期中に@150円で900個仕入れ、800個販売し、期末に200個残ったとします。

期首  100個 @100円
仕入  900個 @150円
販売  800個 @ ?円
期末  200個 @
 ?円 

期末の在庫単価がいくらになるかを計算する方法が在庫の評価方法であり、昭和シェル石油は「総平均法(による原価法)」を採用しています。総平均法により期末在庫単価を計算すると以下になります。

期末在庫の単価=(@100円*100個+@150円*900個)/1,000個=145円

また、総平均法の場合は販売された在庫の単価(売上原価)も@145円となります。

ここで注目すべきは販売された在庫の単価(145円)です。仕入単価(150円)よりも5円低くなっています。これは当期の仕入単価(150円)よりも低い期首の当期仕入単価(100円)を総平均単価の計算に含めるためです。この結果、売上原価が当期の仕入単価(実勢価格)よりも低くなり、その分利益は大きくなります。

売上高 200円 -売上原価 150円(実勢価格)=利益 50円
< 売上高 200円 -売上原価 145円(総平均単価)=利益 55円

実は石油元売りなどの業界では、これを「在庫評価益」や「在庫影響」などと呼んでいます。棚卸資産を期末の時価で評価して未実現利益を計上することではないので注意が必要です。

このように棚卸資産の仕入単価の変動が利益に与える影響は多くの会社で起こる現象ですが、昭和シェル石油のような相場モノを取り扱う会社では棚卸資産の仕入値の変動が業績与える影響は大きいです。ことさらに業績の説明において在庫評価益を取り上げるのも、こうした業種特性を反映してのことだと思われます。

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