リーダーは判断基準をまず示せ 

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リーダー『自問力のリーダーシップ』から「現実直視による判断軸の明確化」を紹介します。

行動計画を立てる際には、方針やそれを土台にした判断軸に一貫性が必要となります。一本芯が通っているかどうか、とも言えます。タイムスケジュールやTo Doだけがリストアップされていても、そこに確固たる方針や判断軸がなければ結果は出づらいものです。しかし、多くのリーダーは往々にしてこれを考えたり説明するのを怠ってしまいます。その最たる理由は面倒だからというものですが、ここをサボってしまう方が結局は手戻りが多く、かえって後で工数がかかってしまいます。何事も最初が肝心です。最初にしっかりと現実に向き合い、判断軸などを熟慮し、説明することにエネルギーを用いるべきなのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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実行計画の具現化の際には、(1)現実直視に基づく判断の明確化、(2)納得感醸成による巻き込み、(3)実行プロセスの明確化とリスク対応の3つが求められます。ここでは、(1)現実直視に基づく判断の明確化についてその勘どころを解説します。

現実直視による判断軸の明確化

市場の変化スピードが速く、多様化している時代には、最前線の社員が裁量権を持って自律的に正しく判断し、必要なアクションを正しく実践することが不可欠です。言い換えれば、メンバーに任せ、彼らの可能性を引き出す経営、つまり、個々人の意欲と能力を最大限に活かす経営が求められています。

その際のカギは、さまざまな意思決定の前提となる「判断軸」がしっかり定まっていることです。ビジネスは、往々にして予定通りにいきません。イレギュラーな出来事や前提の変化があるのがむしろ当たり前です。揺れ動く環境下に判断基準を明確にし、それを組織内で共有しないと、結果として部下の行動を見ていても、以下のような思いに悩まされることになります。事実、こうした感覚を持っているリーダーは多いのではないでしょうか。

・なぜ、あの件から先にやらないのだろう? 
・どうして、いまそのことにこんなに時間を費やしているのか?
・状況が変わったのだから、さすがに同じやリ方じゃマズイとなぜ思わないのか?
・なぜ、あの場面で相談なく進めてしまったのだろう?

では、こうした誤解や認識のズレはなぜ生じるのでしょうか。リーダーとフォロアーのそれぞれに原因はあるのでしょうが、ここではリーダー側の問題に絞って考えます。

リーダー

●リーダーが発信すべき所信を言葉にできていない

リーダーはまず、所信(進むべき方向と原則となる考え方の機軸)を打ち出すことを最大の役割と心得る必要があります。しかし、思いや感覚を言語化し、形式知として文章に落とし込むプロセスは、相応のエネルギーと時間が必要になるので、ついつい後回しになってしまいがちです。その結果、自分の頭の中にあるイメージのままでとどまってしまい、部下に判断基準が伝わらないのです。これはリーダーの不作為であり、怠慢と言わざるを得ないでしょう。

日本社会の特性も無視できません。「阿吽の呼吸」「以心伝心」ということが、これまで美徳とされてきました。しかし、外部環境のダイナミックな変化や社員の多様性が増すなかで、こうしたやり方はすでに通用しなくなってきています。リーダーはまず、自らの判断基準を考えて、言葉にして、きちんと説明することが求められるのです。

●リーダーが本来明確にすべきことから逃げて曖昧にしている

ビジネスは、そもそもクロス・ファンクショナルな協働作業です。立場が異なる人々がそれぞれ利害を調整しながら事にあたっています。ここにリーダーの役割についての自覚すべきポイントがあります。

しばしばリーダーがやってしまうのが、利害対立の安易な回避です。異なる立場の利害対立をその場しのぎで調整しようとすると、「足して二で割る」といった考え方に流れてしまいがちです。しかし、それが組織全体のあるべき判断軸かと言えば、必ずしもそうではありません。状況によっては、特定の関係者に嫌われるような、厳しいことを伝えなければならない場面も出てくるでしょう。

リーダーは、その精神的負担から逃げられないものだと私は思います。曖昧にごまかしたり、対立回避のために二枚舌を使ったりしていては、必ず組織は混乱に陥ります。役割から逃げない、明確な自覚を持ち続ける精神的なタフネス、気骨が、リーダーには求められるのです。

ところで、こうした判断軸は、ブレない強さが要求される反面、必要に応じて変われる柔軟さも求められます。要はバランスの問題なのです。現代のような変化の時代にあって、自らの判断基準が正しいかどうかの確信は、なかなか持ちにくいものです。では、何に留意すればよいでしょうか。

大事なことは、正面から見たくなくなるような厳しい現実にも逃げずに向き合い、正確に事実を認識すること、顧客や現場の声に耳を澄ませ、何が現実かを徹底して知ろうとすること、そしてその事実をもとに徹底的に考え抜くことだと、私は思っています。決め手は、現実直視と深い思考から得られる「気骨」にほかならないのです。

(本項担当執筆者:鎌田英治 グロービス経営大学院教員)

『自問力のリーダーシップ』
鎌田英治(著)、ダイヤモンド社
1,728円

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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