リーダーは判断基準を明確にして意思決定せよ 

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意思決定『自問力のリーダーシップ』から「決断力と柔軟性」を紹介します。

リーダーにとって意思決定が大切なことは論を待ちません。しかし、タイムリーに適切かつ易きに流れない意思決定を続けられる人は多くありません。意思決定を先送りしたり、安易な妥協的決断を下す人が圧倒的多数です。ビジネスに対する当事者意識や信念・確信が欠如していたり、常日頃物事の優先順位を考える習慣がないなど、その理由は様々です。ただ、これではビジネスの競争に負けてしまいます。難しいことだからこそ、自分なりの判断軸をしっかり持ちつつ、タイムリーに適切かつ易きに流れない意思決定ができるリーダーが大きな価値を持つのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

計画を実行、成果を出す際には、(1)資源調達と役割・責任の付与、(2)率先垂範と実行の後押し、(3)決断力と柔軟性の3つが求められます。ここでは、(3) 決断力と柔軟性についてそのポイントを解説します。

決断力と柔軟性

リーダーは、断固たる決断力を示すと同時に、状況に応じて柔軟に変わることが求められます。一見、二律背反に見えるこの課題を乗り越えるカギは何でしょうか。

一つは、判断の軸となる拠り所、原則(ディシプリン)を明確に持つことです。たとえば、社会的な不正は徹底的に排除するという原則を持っていれば、不正を犯した同僚をかばうか、それとも不正をただすか、という二者選択において前者を選ぶことはなくなるでしょう。方法論については、その時々の社内事情や世の中の要請に応じて柔軟に変わるかもしれませんが、根本的な部分は不変であるべきなのです。

このような価値観や、ビジョン・戦略の根幹となる基本方針については、あまりころころ変わっていてはスタッフも混乱しますし、組織としての一体感も生まれません。一貫したコミュニケーションが求められます。

また、明確な原則に従って意思決定を下し、行動し続けることは、原則を徹底させることにもつながります。「意思決定は企業文化を体現する」と言われるゆえんです。こうした原則をしっかり持っておくことは、不測の事態においても一致団結して望ましい行動がとりやすくなるという効果もあります。

一方、仕事を進めるうえでの具体的な方法論(特に短期的、局所的な場合)については、市場環境などに応じて臨機応変に対応することが望まれます。

 

意思決定

●意思決定しないことの悪影響

しばしばリーダーが犯してしまいがちなミスが、意思決定を先送りすることです。「市場の環境変化を見極めて」などともっともらしい理由をつけますが、多くの場合は自分か苦手とする事柄から逃げているにすぎません。

しかし、リーダーの意思決定先送りは大きなコストを伴います。早い段階で手を打っておけば小さな傷ですんだものが、大きな傷になってしまうかもしれませんし、リーダーが意思決定を保留している間、スタッフの活動が実質的に止まってしまうことも少なくありません。

リーダーは、こうしたコストを強く意識したうえで、迅速かつ毅然とした意思決定を行う必要があるのです。そのために私自身が意識していることが2つあります。1つは普段の準備、つまり事業の目的、大きな目標と基本戦略と優先順位の大原則を考え抜いておくことです。もう1つが「何もしない、何も変えない」という意思決定です。これも立派な戦略オプションです。意思決定の留保(ペンディング)を避けんがための、不要な決断を防ぐためです。

●安易なトレードオフに逃げない

多くのビジネスパーソンが悩む事柄として、トレードオフの判断があります。たとえば、「質とスピードのどちらを取るべきか」「価格と安全性のどちらを取るべきか」という質問です。特にリーダーは、スタッフからのこうした質問に対して、理由とともに明確に答えなくてはなりません。その答えは、スタッフの意識や行動を大きく左右することになるでしょう。

こうしたトレードオフを判断する一つのコツは、より上位の原則に立ち返ることです。たとえば、会社が短期的利益ではなく長期的利益を目指すのであれば、多少価格は高くとも、安全性の高い業者から仕入れようという判断になるかもしれません。

もう一つのトレードオフを考える際のポイントは、「本当にそれはトレードオフなのか」を問い返すことです。かつて経営学者のゲイリー・ハメルは「ORではなくANDを狙え」と言いました。安易にどちらかを選んでいてはブレークスルーを起こすこともできませんし、競争相手に圧倒的に勝ちきることもできません。難しいようでも、一見トレードオフに見える2つの事柄を同時に満たせないか考えることが時には必要です。

「質とスピードの両方を満たす方法はないのか」「価格と安全性の両方を満たすためには何が必要なのか」――こうした質問を投げかけることで、メンバーにチャレンジを促すことも、リーダーの重要な役割なのです。

(本項担当執筆者:鎌田英治 グロービス経営大学院教員)

『自問力のリーダーシップ』
鎌田英治(著)、ダイヤモンド社
1,728円

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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